お酒(醸造酒)を造る時の発酵形式は3つに分類できます。単発酵、単行複発酵、並行複発酵です。お酒は主に、酵母によってアルコールを造る醸造酒と、これを蒸留して造る蒸留酒があり、今回のお話は酵母によるアルコール発酵を経てできる醸造酒のお話です。
なんじゃ?こりゃ?って皆さんなるでしょうが、実は結構単純です。
ここで、とても重要な大前提をお話します。酒を造るにはアルコールを造り出す微生物である酵母(yeast)が必要です。酵母はちょっとわがままで、澱粉などの大きな炭水化物は食べられず、小さな炭水化物である二糖や単糖(グルコースなど)しか食べることができません。そして、食べた糖をアルコールと炭酸ガスに分解して外に棄てます。つまり、酵母を養うには小さい炭水化物が必要不可欠で、お酒を造る原材料によってこの小さい炭水化物の供給方法が変わるのです。
大事な事なのでもう一度おさらい笑
『酵母は小さい炭水化物(グルコースなどの単糖)しか食わん!!』
もう1つ大切なことを言います。
『大きい炭水化物は甘く感じなく、小さい炭水化物ほど甘く感じる!』
これは人間の舌の問題ですが、以後、話の判断材料にしてください。
では、お酒を造る時の発酵形式の話をします。お酒の原材料に目を向けてください!
・ワイン(果実酒)→ブドウなどの果実
・ビール→麦芽(発芽した麦)、ホップ、水
※ポップは発酵形式の説明をする時には不要なので以後省きます。
・日本酒→米、米麹(カビの生えた米)、水
この原材料のどこに甘く感じる小さい炭水化物があるのか?考えてみて下さい。
・ワイン→ブドウなどの果実は、皆さん、甘いですよね?つまり小さい炭水化物が既にある原材料ですので、酵母はそのままで食べてくれます。
・ビール→麦芽は発芽させた麦です。麦は穀類で基本的には砂糖のように甘くはありませんよね?つまり大きい炭水化物の集合体なので酵母はそのままでは食べてくれません。
・日本酒→米も麦と同じで穀類です。これも大きい炭水化物の集合体なので、同じく酵母はそのままでは食べてくれません。
そのままで糖を食べてくれるなら、酵母による単発の発酵だけなので『単発酵』と言います。
そのままで糖を食べてくれないなら、酵母が食べられる糖を得るための発酵を経てから、酵母による発酵を行うという複数の発酵になるので『複発酵』と言います。
この複発酵を、『糖を得るための発酵』と『酵母によるアルコール発酵』を、別々の段階に分けてやる場合を『単行複発酵』、同時進行でやる場合を『並行複発酵』と言います。
お酒を造る時の発酵形式の話をします。
ワインは糖を酵母でアルコールに変える単発の発酵形式なので単発酵です。
ビールは麦芽で糖化して麦汁にし、麦汁を酵母でアルコールに変える複数の発酵形式だけど、糖化とアルコール発酵の工程が別々なので単行複発酵です。
日本酒は米麹で糖化、糖化したものを酵母でアルコールに変える複数の発酵形式で、糖化とアルコール発酵の工程が同時進行なので並行複発酵です。
簡略化すると
・ワイン→アルコール発酵だけ→単発酵
・ビール→糖化とアルコール発酵を別々に→単行複発酵
・日本酒→糖化とアルコール発酵を同時に→並行複発酵
となるので覚えておいてください。
今回、この説明をしたのは、甘酒の種類を説明するために、日本酒の製造工程を超簡略化し、その際に、本来の日本酒の発酵形式『並行複発酵』の話をした為でしたので、気になる方は『日本酒の造り方から理解する甘酒の種類』をご参照ください。
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