甘酒の麹と酵素の生き死にの話~麹の一粒一粒は麹菌の住まう町~

 
甘酒を調べた時によく目にする情報はやはり美容や健康面を歌うものが溢れています。
そして、それらの情報や市販の甘酒を手にするときに同じく良くみられるのが、『麹が生きている』や『酵素が生きている』というフレーズです。
 
今回は今一度、麹菌の姿に着目し、甘酒を造る際の麹菌や酵素の生き死に関しての話をしていきます。
 

麹菌の名前の由来と生活の様子

麹菌の名前の由来

日本の麹菌は、アスペルギルス・オリーゼというカビの一種です。オリーゼの綴りはoryzaeと書き、その名の由来はイネ属の『oryza』から来ています。つまり、イネと関係の深い菌であるという事です。
 
彼らは、イネに住み着き、イネが作り出した澱粉を食料として食べて生活してきました。
 

麹菌の住まう町の様子

米麹とは、そんな彼らが生活を営んでいる町と言えるでしょう。
麹菌の町の様子
麹菌は生活を営む際に、菌糸という根っこの様なものを張り巡らせて行きます。
拡大して見ると、米の表面に広がりつつ、その内部の隅々まで行き渡った様子が観察できます。
 
ここお米の上で、彼らは食べ物を食べ、要らないものを排泄してます。この辺りは人と同じですね!
 
しかし!!彼らは人のように口があるわけでも消化器官があるわけでもありません。
人は、食べたものを消化器官で、消化酵素などを用いて消化して腸から吸収します。
麹菌は、食べ物の上で消化酵素をばら撒いて、消化されたものを植物が根っこから吸収する様に吸い上げていきます。
 
この時、ばら撒いた酵素がそのまま米の中に溜まりに溜まった状態で、麹菌が沢山住み着いている姿があの米麹の姿となります。
 

甘酒は麹が生きているのか?酵素が生きているのか?

米麹とは、麹菌が沢山住み着き、ばら撒かれた酵素が溜まりに溜まった状態のものです。ここから、甘酒にした際の『麹が生きてる』『酵素が生きてる』に視点を写して説明していきます。
 

麹菌と酵素の話

最初に麹菌と酵素について、簡単に説明します。
麹菌とは、呼吸も食事も繁殖もするれっきとした生き物です。
酵素とは、ハサミやカッターなどと同じ、何かをするために生み出された道具で、タンパク質で出来ています。
 
生き物は生きてるか死んでるかで話をすることができますが、道具は生きてるか死んでるかでは話をしません。
つまり、普通、道具は何かをするための機能があるかないか、壊れているか壊れていないかで話をします。
 
ここで話を戻すと、麹菌は死んでしまうと働かなくなり、酵素は壊れてしまうと働かなくなります。
 

甘酒を造る時の温度~麹菌と酵素が放り込まれる過酷な環境~

そして話を甘酒作りに移します!
唐突ですが、甘酒を作る時の条件を思い出してみてください!
 
『お粥を炊き、温度を60℃まで下げて、米麹を加えてかき混ぜて6時間発酵させる』
 
加えたこう米麹は、麹菌の町で、そこには麹菌と彼らが作り出した酵素が沢山あります。
 
『60℃の熱が掛かった時にまずダメになりそうなのはどちらでしょう??』
 
生き物である麹菌か?はたまた、道具である酵素か?
 
ここは、人間が60℃のお風呂に浸かったら…というお笑いコントにありそうなシーンを思い出してください…
 
側から見てる分には面白いシーンでしょうが、やってる人からしたら命がけです。
 
ちなみに60℃とは、牛乳などの低温殺菌の温度(パスツーリゼーション)です。つまり、生き物である菌が死ぬ温度という事です。
 
甘酒を作っている際に、生きていると信じていた麹菌達…実は、この温度に晒された段階で、天国に旅立っています。
 
しかし!ハサミやカッターは60℃のお湯に浸けてもビクともしませんよね??
それに似た理由で、麹が作り出した道具『酵素』は60℃でも壊れることなく、働いてくれます。手作り甘酒は酵素が生きていると言われる背景にはこのような理由があるのです!
 

市販の甘酒は酵素が死んでいる?壊れている?

今まで、60℃の温度にさらされた麹菌は死ぬという話と酵素は壊れずに働いてくれるという話をしました。しかし!市販の甘酒は酵素が死んでいると言われる理由には、なんと温度に関係があります。
 
市販の甘酒は出荷する際に、酵素による品質変化を防ぐ目的と、雑菌による腐敗を防ぐ目的で、90℃くらいまで加熱します。
ここで酵素が何で出来ていたのか思い出してください…それは、タンパク質です。
タンパク質は高温にさらされると、例えば焼き肉や卵のように、色などの見た目や食感が変化します。そしてそれが冷えても、加熱する前の生の状態には戻らないことはご存知でしょう。
 
流石に、60℃の熱にさらされても壊れなかった酵素も90℃の熱にさらされることで壊れてしまいます。
 
その様なわけで、市販の甘酒は酵素が壊れていると言われていますが、中には酵素を壊さない為に90℃の殺菌をせずに冷凍流通している『生甘酒』というものが存在します!また、私たちが家で手作りする甘酒も酵素が壊れていない生甘酒です。
 

最後に

今回は麹菌の様子、麹菌が作り出した酵素の話、そこから麹菌と酵素の生き死にの話を致しました。
この話を参考に、市販の甘酒を選ぶ際に色々見ていただき、自分にあった甘酒ライフを手に入れて頂ければと思います♪