普段生活をしていると、『微生物』、『菌』などの言葉を耳にしたり、目にしたりするかと思います。善玉菌、悪玉菌、有用微生物、雑菌、細菌、食中毒菌、腐敗菌、発酵菌、酵母菌、麹菌等々挙げていくときりがないほど『微生物』や『菌』が付いたキーワードがあふれています。今回はこの『微生物』や『菌』というキーワードに着目した話をしようと思います。
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『微生物』と『菌』とは~何を指した言葉なのか~
このサイトでよく出てくる『微生物』は、麹カビ、酵母、乳酸菌です。発酵食品を造る時に活躍する『微生物』は大きく3つのグループに分けることができ、それは『カビ』、『酵母』、『細菌』です。
まさしく、このサイトでよく出てくる『カビ=麹カビ』、『酵母』、『細菌=乳酸菌』はそれぞれのグループに所属する生き物だったのです。
発酵食品だけに限らず、我々の生活の中で見られる『微生物』の多くはこの『カビ』、『酵母』、『細菌』の三つのグループで成り立っているといっても過言ではなく、すべてひっくるめてざっくりとした表現で『菌』や『微生物』などと呼ばれています。
それぞれの言葉、『菌』はざっくりとカビ・酵母・きのこなど微生物全てをひっくるめた表現ですが、『微生物』は『顕微鏡が開発されるまで見つけることの出来なかった微細な生物』というちゃんとした意味を持っています。
この『菌』や『微生物』が指す物や意味は、ほぼ同じですので、今後は『微生物』と統一しようと思います。
『微生物』は大きく2つのグループに分けることが出来る
ここで、『微生物』という言葉で統一することが出来ましたが、この『微生物』は細胞の基本構造の違いから、2つのグループに分けることが出来ます。この2つのグループは、微生物だけに限らず、全ての生物に当てはまるもので、その細胞の違いからくるグループは、『原核細胞』と『真核細胞』です。
簡単に2つのグループを説明すると、
・原核細胞…細胞内に遺伝情報も含めて生き物として必要なものが分け目なく分散して存在している細胞
・真核細胞…細胞内に膜に覆われた細胞小器官というものがある細胞
※細胞小器官:人の内臓の様にそれぞれ固有の役割がある細胞内の器官。核、ミトコンドリア、葉緑体など。特に、ミトコンドリア(好気性細菌の名残り)、葉緑体(藍藻類という細菌の名残り)の二つの器官は、独自のDNAを持ち、分裂しているそうです。この別の生き物が、違う生き物の細胞内に入る形で共に生きることを細胞内共生といいます。
この様に細胞は原核細胞と真核細胞の二つのグループに分けることができ、それぞれの細胞でできている生物を、原核細胞生物(以後、原核生物)、真核細胞生物(以後、真核生物)と言います。
では、ここで原核生物と真核生物を私たちの知っている情報の範囲内で分類してみましょう。お酒を造る時に使う麹カビや酵母、ヨーグルトやチーズを造る時に使う乳酸菌、または魚や植物、我々人間に至るまでこの分類に収まります。
・原核生物…真正細菌(所謂、細菌(バクテリア)…乳酸菌、酢酸菌、大腸菌、納豆菌が所属している)、古細菌
・真核生物…菌類(カビ、きのこ、酵母)、藻類、原生生物、植物、動物
そう、発酵食品に関わるカビ・酵母・細菌は、カビと酵母が真核生物、細菌が原核生物と全く異なるグループの生き物だったのです。
細胞構造の違いから増え方に差が生まれる
細胞内に沢山の物が詰まった真核生物と、簡素な原核生物は、例えるのであれば、荷物を沢山持っている人と、少ない人の様なイメージを持てばいいかと思います。荷物が少なければ、引越しも簡単にサクッと終わりますよね?
この様に例えると、乳酸菌は体の構造が簡素な原核生物で、簡素だからこそ分裂・増殖のスピードが非常に早く、カビや酵母は体の構造が複雑な真核生物で、複雑だから分裂・増殖のスピードが非常に遅いという説明に説得力が出ると思います。
また、ヨーグルトは6時間ほどで造る事が出来るのに、米麹は2日間もの時間を要す理由も同じです。そして、食品(酸っぱくなった甘酒など)を腐らせたり、食中毒の原因菌に細菌(大腸菌・サルモネラ・黄色ブドウ球菌など)が多い理由もこの分裂速度の速さから来ているのです。
そして、甘酒が雑菌(細菌)に汚染されやすい理由は、飲む点滴と言われるほど栄養素がたっぷりのある場所が生存に適した環境になってしまえば、爆発的に雑菌が増えるのは自然なことなのです。だから、甘酒を造る時は55~60℃の低温殺菌法の温度帯で造る必要がありますし、失敗すると細菌が大繁殖して臭くなったり、乳酸菌が大繁殖して酸っぱくなったりするのです。
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