日本には古来から神様に対し、春には豊作を祈願し、秋には収穫を感謝する祭りの文化があります。
祭に欠かせないものとして、神様にお供えする食べ物などの御神饌(ごしんせん)が挙げられます。この御神饌の中で特別なものが、お米やその加工品になります。お米の加工品の代表的な物には餅・御神酒(日本酒)そして、甘酒(醴酒・一夜酒)があります。
では、なぜお米やその加工品が重要なのか?その理由は、お米は神様が天界で育てていた作物で、地上でも育てる様に遣わせたという由来から来ています。
甘酒は現在のブームで、商品自体の事はある程度知られるようになりました。しかし、『甘酒を用いた祭り』といった話はあまり耳にしたことがないのではないでしょうか?きっと知ってる方でも1〜2個くらいでしょう。
しかし!『甘酒を用いた祭り』は確認できただけでも、日本全国に150個以上存在します!そして、これらを分類すると、大きく3つのグループに分けることができるのではと、筆者は考えています。
①『甘酒が祭りの主役として用いられる甘酒祭や甘酒神事など』
②『神様にお供えする御神饌や祭りの一部に甘酒を用いるもの』
③『よくよく調べると甘酒が御神饌の中に含まれているもの』
①番目の甘酒祭や甘酒神事は甘酒の名を冠している通り、甘酒が主役のお祭りです。豊作の感謝や祈願として甘酒を献上したり、甘酒を掛け合うことで疫病流しや無病息災を願ったり、甘酒の出来具合で豊作か凶作かの占いをするなどの祭りを指します。
②番目の甘酒祭りとまでは言われないが、神様にお供えする御神饌や祭りの一部に甘酒が用いられている祭りです。儀式にちなんだ固有の名前を冠している事が多く、その祭りの重要な要素として甘酒が登場します。
③番目のお祭りは、ちょっと調べたくらいでは甘酒の要素が解りずらいのですが、よくよく調べると御神饌の項目にある祭りを指します。
ここで、一つ日本の祭りの特徴で、神様と人が共に同じものを食べるという『神人共食(しんじんきょうしょく)』という文化があります。これは神様にお供えしたものを人が食べることにより、神様は信仰を得て、人は神様からのご加護を授かるといった意味合いがあります。
祭の際に、食べ物やお酒を配るのはこの様な習わしを、直会(なおらい)と言い、『甘酒を用いた祭り』では、大体、甘酒を頂くことができます。
調べれば調べるほどに面白さが見えてくる『甘酒を用いた祭り』、明治時代の酒税法の関係で濁酒から甘酒に変化したり、主祭神が女神様という理由からアルコールのない甘酒を献上したり等々、本当に様々な姿や背景があります。
また、甘酒の呼び名も各地様々です。醴酒、一夜酒などの甘酒のルーツになったと言われている名称は勿論、その土地固有の面白い呼び名も沢山あります。
当サイトでは『甘酒を用いた祭り』の特に①と②の祭りに重点を置き、その不思議な姿を発信していくつもりです。
※シリーズ『祭事・所縁の地』にて
目的は祭りに出てくる甘酒の背景や意味を知ることで、我々のご先祖様がどの様な願いを込めて甘酒と付き合ってきたのかが分かります。そして、甘酒の歴史上の姿が明らかになることで、醸造学的・発酵食品学的に面白い考察もできるのではないかと思っています。
最後に、『甘酒を用いた祭り』を広く発信することで、21世紀の現代に消えつつある伝統文化を22世紀へ、さらにその先に繋げていければと願いを込めて活動をしていきたいと考えています。