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甘酒との所縁
牧野三所社について
牧野三所社とは、この地に古くからある牧野神明社、椿神明社、厳島社の3社を指しています。
※神明社(しんめいしゃ)とは、伊勢神宮の内宮と外宮の神様を祀る神社のこと。
牧野神明社と椿神明社は、それぞれ伊勢神宮の内宮と外宮に見立てられた神社で、主祭神は牧野神明社(内宮)に天照大御神、椿神明社(外宮)に豊宇気毘売神が祀られています。厳島社には宗像三女神が一柱である市杵島姫命が祀られており、椿神明社の境外末社とされています。
この3社では毎年10月15日及び16日に、甘酒祭と例大祭が執り行われています。
祭りの起源は次に説明しますが、この3社の甘酒祭りは異なる起源の個々の祭りではなく、共通の起源を持ち、さらに同日に開催される祭りであることから一つの記事に致しました。
甘酒祭の起源
椿ノ森社(牧野神明社)境内の笈瀬川の側に、綺麗な花を咲かせる藤の大樹があったが、集まる見物客達が近くの畑を踏み荒らすことが問題になっていた。そこで土地の人達は、問題解決の為に藤の木を伐採したが、その年に悪疫が蔓延してしまった。
村の知恵者によると『切り倒した藤の木の祟りで、家毎に酒を醸して神様に献上しなさい』という話であったが、酒を造るのは難しいので、代わりに甘酒を造り献上する事にした。
笈瀬川(御伊勢川)の清き流水を用いて甘酒を造り、牧野神明社(内宮)と椿神明社(外宮)に献上し、残った甘酒を病人に与えたところ、病が癒えて平穏が戻った。
それから毎年、旧暦9月15日(現在は10月15日)に笈瀬川の水で醸した甘酒を用意し、牧野神明社と椿神明社、そして厳島社、須佐之男社、稲穂社の牧野五社に献上し、神の御加護に感謝し、氏子の幸せと安全を祈る祭りとして今日にまで伝わっている。
これが、この甘酒祭りの起源です。
牧野三所社と甘酒祭り
牧野神明社と甘酒祭り
牧野神明社は伊勢神宮の内宮に見立てられた神社で、主祭神は天照大御神です。昭和20年3月に空襲で社殿が消失してしまい、再建されたのは終戦7年後の昭和27年のこと。
牧野神明社では10月15日と16日の両日に甘酒祭が行われ、16日は例大祭と合わせての実施だそうです。
宮司さんによる式典は16日の例大祭日の朝8:30から執り行われ、祭囃子が町内を巡るのだと地元の方に伺いました。15日の甘酒祭では式典などは行われず、神前に御神饌を供え、参拝者に甘酒を配るのみです。
※甘酒接待は15日12:00~15:00、16日9:00~14:00です。
椿神明社と甘酒祭り
椿神明社は伊勢神宮の外宮に見立てられた神社で、主祭神は豊宇気毘売神です。昭和20年の空襲の際に、本殿が焼失することなく今に残っています。
椿神明社では10月15日に甘酒祭、16日に例大祭が行われます。式典は牧野神明社と同じく16日の朝ですが、この日に甘酒接待はありません。
15日の甘酒祭りでは式典などは行われず、神前に御神饌を供え、参拝者に甘酒を配るのみです。
※甘酒接待は15日14:00~16:00です。
厳島社と甘酒祭り
厳島社では10月16日が甘酒祭りであると境内の由緒書きに記載されていましたが、地元の方に伺った所、こちらも15日開催とのこと。16日に例大祭が行われますが、この日に甘酒接待はありません。
15日の甘酒祭りでは式典などは行われず、神前に御神饌を供え、参拝者に配るのみです。
※甘酒接待は15日14:00~16:00です。
牧野三所社の甘酒祭りの感想
牧野神明社の甘酒祭りの感想
本日は2018年10月15日(月)で、早朝は曇りでしたが、お昼ごろになると雨が降り出し、どんよりとした秋雨模様…陽射しもない為、少し寒く上着が欲しい陽気でした。
甘酒祭りは式典は執り行われず、12:00から甘酒接待がひっそりと始まりました。
甘酒接待は晴れていれば、社殿横に用意された釜で沸かされ供されたそうですが、生憎の雨の為、社殿隣の自治会所にて配布されました。
※昭和62年の甘酒祭りの写真を見ると、この釜の周りでの甘酒配布の様子が伺えます。
甘酒は米麹の甘酒で、仄かにカラメル香があります。麹の粒は多くなく細かい、そしてコクや塩味はあまり強くなくスッとしたストレートな甘さで、少々生姜が利かせてあります。
特徴的なのが小さなお餅(金餅といいます)が2つ入れてある事…お餅の入った甘酒は初めてですが、これは凄くマッチしていて美味しいです!
椿神明社の甘酒祭りの感想
お昼が過ぎて14:00ごろになると雨も止み、薄っすらと雲の切れ間から光が見えなくもない感じ。
こちらでも甘酒祭りの式典などは行われず、14:00から甘酒接待が始まり、地元の方々が参拝に来られていました。
神社の本殿に歩みを進めると、賽銭箱の横に、『甘酒受』と書かれた青い鍋が置かれていました!
これが、起源の話に出てきた、各家庭で造った甘酒を奉納する為の桶です。昔は木桶が置かれていたそうですが、現在はこの鍋が置かれています。
甘酒接待は鳥居をくぐった参道脇にテントとテーブルが設けられており、そこで鍋で熱々に熱せられた状態で配布されていました。
甘酒は米麹の甘酒で、仄かにカラメル香のある麹の香りがしました。塩を少し加えられてありコクが出ており、甘さや旨さ、そして米粒のバランスが良く非常に飲み易い甘酒です。そのまま飲んでも、好みで生姜を加えて飲んでも美味しく頂けました。
※甘酒は凄く熱く、外気もひんやりしていたので、ちょびちょびと飲みました♪
※境内の木に残っていた綺麗なセミの抜け殻…秋の空気に似つかわしくないけどどことなく夏の名残りを感じて風情がありました。
厳島社の甘酒祭りの感想
椿神明社での甘酒接待を終え14:30頃に向かうと、人だかりができている!
12:30頃に参拝した際には、特に準備されている様子もなく、さらに掲示板には甘酒祭りは10月16日に執り行われると書いてあったので半ばあきらめていました。
椿神明社の甘酒接待に参加した際に、氏子さん達から今日あると思うよ…と言われて、再度訪れて本当に良かった。
椿神明社と同じく、神社本殿の賽銭箱の脇には青い鍋の『甘酒受』が置かれていました。昔は半分くらいまでたまっていたそうですが、現在はほんの少し入るか全く入らないか位なのだとか…
甘酒接待は境内の池に囲まれた本殿脇に設営されており、熱過ぎない丁度良い飲み頃の甘酒を参拝した方々に配布していました。
甘酒は米麹の甘酒で、癖の無い柔らかい麹の香りがし、牧野神明社と椿神明社の甘酒と比べ、かなりドロッとして濃く、どっしりとした甘さを旨さがありました。生姜を多めに加えても、甘酒らしさが失われずパンチが利いて旨い!
さらに幸運なことに元の原液の甘酒(一斗缶入り)を食べさせていただくことができました。
元の原液は、ほんのりと果実味のある麹の香りと、強い甘味にやさしい酸味がある本物の甘酒でした…
厳島社では町内の方と沢山話をする機会があり、
『昔は近くに麹屋があり、板状の大きい麹を購入し、鍋一杯に甘酒を造っていた』
『造った甘酒を御神酒を入れる瓶に詰めて、5社の神社を参拝して回り5等分ずつ奉納した』
『造った甘酒はドロドロで濃かったので、玉串(神社でよく見る葉っぱの付いた枝)の柄で掻き出した』
『昔はこの辺りも農村で、甘酒造りは祭事だけに限らず、ちょっとしたおやつとしてよく甘酒を飲んでいた』
という話を聞くことができました。
板状の麹は麹蓋という箱で造り、大体1.5~1.8キロくらいの生麹ができます。つまり5キロ近くの甘酒を祭りの日には各家庭で鍋一杯に仕込み、皆で飲んだり、神社に奉納していたということでしょう。
5社の神社とは、先に挙げた牧野神明社・椿神明社・そして厳島社の3社に、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を祀る稲穂社、素戔嗚尊を祀る須佐之男社を加えた神社のことで、牧野五社と言われ昔から牧野町の氏神様として信仰されていました。
甘酒祭りの情報
開催日:牧野三所社(牧野神明社、椿神明社、厳島社)にて10月15日(牧野神明社は16日も行う)
甘酒接待の時間は、
・牧野神明社は、15日12:00~15:00、16日9:00~14:00
・椿神明社は、15日14:00~16:00
・厳島社は、15日14:00~16:00
牧野神明社
最寄り駅:名古屋駅から徒歩10分
住所:名古屋市中村区太閤1-18-17
椿神明社
最寄り駅:名古屋駅から徒歩6分
住所:名古屋市中村区則武2-4-10
厳島社
最寄り駅:名古屋駅から徒歩11分
住所:名古屋市中村区太閤5-1