お酒を造る時には例外なく『糖を食べてアルコールを作り出す生物』である酵母が関わっています。
酵母は、わがままで澱粉などの大きいサイズの糖(以後、澱粉)は食べず、分解された小さいサイズの糖(二糖や単糖など、以後、小さい糖)を食べます。そしてお酒を造る時は、酵母の餌になる小さい糖を用意する手段が必要となります。
それが、今回のテーマの『米麹による糖化』、『麦芽による糖化』になります。
米麹による糖化
日本酒の発酵形式(並行複発酵)のお話をしたときに、米麹で糖化すると説明しましたが、これが酵母に献上するための小さい糖を造り出す工程なのです。
米麹とは、麹カビ(Aspergillus属のカビ)を米に繁殖させて、その繁殖の際に作り出した消化酵素がふんだんに蓄えられているものです。このふんだんに蓄えられた消化酵素で、原材料の澱粉を小さい糖に分解し、酵母に献上する事で、あの日本酒を造り出しています。
昔から造られていた甘酒ですが、これは米麹の糖化作用によって造られた小さい糖を酵母に献上せずに、人間が食べることにしたもので、甘さの主役はブドウ糖(グルコース)です。
麦芽による糖化
ビールの発酵形式(単行複発酵)のお話をしたときに、麦芽で糖化すると説明しましたが、これが酵母に献上するための小さい糖を造り出す工程なのです。
麦は水を吸って発芽する時に、胚芽の部分に蓄えてある消化酵素で、胚乳に蓄えてある澱粉を小さな糖に分解してそれを成長する為のエネルギー源として利用します。この発芽して成長するために胚芽に蓄えてある消化酵素で、澱粉から小さい糖を得てエネルギー源にするのは、植物の種子ほぼ全ての共通事項です。人間はこの麦が元々持っていた酵素を利用して小さい糖を沢山含んだ麦汁を得て、酵母に献上する事で、あのビールを造り出しています。
一つ豆知識ですが、昔から造られていた水飴ですが、これは米の胚芽に蓄えてある消化酵素で澱粉を糖化して造ったものや、麦の胚芽に蓄えてある消化酵素で澱粉を糖化して造ったものが存在し、いずれも甘さの主役は麦芽糖(マルトース)です。
実は、韓国の甘酒として知られているシッケという飲み物は、米麹(麹菌)による糖化ではなく、麦芽による糖化で造られたものです。
最後に
この様にお酒を造る際には、アルコールを造ってくれる酵母の餌となる糖が必要になります。そして、どの様な形で酵母の為の糖を造ってあげるのかという選択肢として、麹による糖化、麦芽による糖化の大きく2つが挙げられるのです。
ちなみに、ワインやシードル(リンゴのお酒)などの果実酒は、元々の原材料に甘さの主役として果糖(フルクトース)が含まれていて、それがそのまま酵母の餌となります。
熟し過ぎた柿や梨、リンゴが偶にアルコールっぽい感じがするのは、酵母が果実の糖を餌としてアルコールに変えているからなのです。この様に自然に発生したお酒を猿や象が口にして酔っぱらっている姿をテレビでたまに見る事ができます。
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