Contents
甘酒との由来
神社について
月田近戸神社は、赤城山に鎮座する赤城神社の里宮(近処)の意を持つ粕川流域に点在する近戸神社の一社で、主祭神は大己貴命(おおなむちのみこと※後の大国主命)と豊城入彦命(とよしろいりびこのみこと)です。
粕川は赤城山の火口湖である小沼(この)から始まり、そこから粕川町を経由して、最終的には利根川に合流する川です。小沼から利根川までの全長は約40キロ、その中間に位置する約20キロ地点に今回の祭りが執り行われる月田近戸神社ならびに当社の外宮が鎮座しています。
御川降り神事について
この『御川降り神事(おかおり)』と『粕川』の名前は関係が深く、『月田神社由緒記』によれば、その始まりは1276年(健治2年)に濁酒をこの川に流すようになった事から粕川と名付けられたそうです。
そして、濁酒を川に流す理由は、『三夜沢赤城神社では豊城入彦命が天の神様と土地の神様を祀った後に、濁酒を粕川に流すことで祭事の終わりの合図とし、豊城入彦命の長女が酒粕が流れてくるのを見て上流で祭事が無事に終了したことを知る』という伝承から来ています。
近戸神社の祭りの流れ
当社の例大祭(8月最後の日曜日)の流れは、
①本殿で例大祭の式典を行い、同時に境内にて『月田のささら』で有名な獅子舞が奉納される。
②粕川が流れる外宮に移動(神輿渡御)し、そこで粕川に祭りの終了をお知らせする甘酒(昔は濁酒)を流す『御川降り神事』が執り行われる。
③神社に戻った後、『雌獅子隠し』で有名な雌獅子を巡る雄獅子同士の戦いの舞が奉納される。
の主に3部で構成されています。
『獅子舞は五穀豊穣と天下泰平を願い、御川降り神事は祭りの終了を知らせるだけでなく、今年の豊作を祈願する意味合いのある行事』
です。
川に流すのは濁酒か?甘酒か?
当初は濁酒を川に流していた様なのですが、現存する資料には濁酒と甘酒の両方で書かれている場合が多く、現在はどうなのか気になっていました。
この事については近戸神社の宮司さんに直に祭りや御川降り神事に関してお話を聞くことができました。
現在、粕川に流すのは、濁酒ではなく、宮司さんのお宅で造った甘酒で、終戦5年後(1950年)頃までは濁酒を造って流していたそうです。
このお祭りは、台風の多い季節に、よく氾濫していた粕川、赤城川の神様を鎮める意味合いもあり、昭和22年のカスリーン台風の時には川が氾濫し多くの死者が出てしまったそうです。
この『御川降り神事』は、昔は濁酒を用いた濁酒神事であったものが、甘酒を用いた神事に変わったものだという事になります。
月田近戸神社の御川降り神事の感想
本日は2018年8月26日(日)で、日差しはカンカン照りの夏晴れで、気温は37℃もありました。時折風に涼しさが混ざっているもののうだるような暑さ…稲穂がほんの少し金色を帯び始めており、吹き抜ける風には稲藁の香りが混じっています。
例大祭の式典は13:10から本殿にて執り行われ、その間『月田のささら※群馬県民俗文化財』と言われる獅子舞が約1時間行われました。参拝者の目は、本殿の式典に目が向くことはなく、ほぼ獅子舞しか観られていない感じです。
御川降り神事に用いられる甘酒は、御神饌が置かれた台の下にひっそりと置かれていました。この祭りは、一升の酒樽に甘酒が詰められ、それを川に流す様から、『一升甘酒祭』とも言われているそうです。
御川降り神事に用いられる甘酒は、御神饌が置かれた台の下にひっそりと置かれていました。この祭りは、一升の酒樽に甘酒が詰められ、それを川に流す様から、『一升甘酒祭』とも言われているそうです。
御川降り神事は、15:00から1.4km離れた近戸神社外宮へ獅子舞と共に向かう神輿渡御から始まります。甘酒は神職の方に抱きかかえられ、運ばれていきますが、中身が少しこぼれ出ており、ふんわりと酒粕甘酒の香りがします。
外宮に15:55に到着し、諸々の式典を経て、16:10に粕川に甘酒を流す神事が執り行われました!石宮の奥の小川にて、土を踏み固めた階段を降り、川辺から甘酒を流していきます。これ、きっと雨が降ってぬかるんだら足を滑らせるに違いない…
甘酒は味わってみたかったのですが、どうも地域の氏子さん達だけに振舞われるようでした。
外宮での祭りを締めくくるかの様に突如、激しい通り雨が…雨が過ぎて、20分後には先程の雨を降らせたであろう積乱雲が空に美しく伸びていました。
その後、一行は17:35には近戸神社境内に戻り、獅子舞のクライマックス『雌獅子隠し』が始まりました。昼間の人が閑散としていた状況から一転し、この時間は境内一杯に人が集まっています。雌獅子隠しという穏やかな印象はなく、雌獅子を雄獅子二匹で奪い合い、ぶつかり合って片方の雄を雌の目の届かない所に追いやって、その後、雌と舞い、再度、雄が戻ってきたらまた追いやってを繰り返すのですが、なんとも苛烈で激しい舞でした。
人垣に突進していく、二匹の雄獅子に観客の歓声と悲鳴、笑い声が交じりあい、子供はテンションが高くなり、獅子に近づき、獅子はそんな子供をガバッと捕まえたりして、昼間の舞とは一転して、アドリブが多き演目です。
雄獅子は角が二本、雌獅子は角が一本で、雌獅子だけは本殿前でずっと踊っており、後ろでは雄獅子が暴れまわる後継は日中からの疲れを忘れさせる迫力があります!
そう、このお祭は、最初から最後までほぼ獅子舞が舞われているです。例大祭の式典を本殿で行っている際も、御川降り神事の際も、さらにこれらの神事の合間に至っても少しの休みを挟み、正午前から晩まで獅子が舞い続けます。
この獅子舞は、五穀豊穣と天下泰平を祈願して行われているようですがここまで手厚い願いも稀有なのではないでしょうか。
御川降り神事の情報
開催日:8月最後の日曜日に開催(最初の獅子舞が11:50~、御川降り神事は16:00前後から1.4キロ離れた外宮にて)
最寄り駅:上毛電鉄の膳駅から徒歩10分
住所:群馬県前橋市粕川町月田1261(月田近戸神社・本殿)
月田近戸神社HPのURL:該当無し