甘酒祭19:福岡県福岡市西区の能古島の白鬚神社のおくんち行事

福岡県福岡市西区の能古島の白鬚神社

甘酒との所縁

能古島の白鬚神社について

能古島の白鬚神社は、フェリー待合所「能古旅客待合所」から0.5キロ(徒歩6分)歩いたところに鎮座してます。

島へのアクセスは福岡市西区の姪浜旅客待合所(能古渡船場)からフェリーで15分と近く、また船便は1時間に1本出ています。※のこのしまアイランドパーク参照

当社は島の産土神(その土地で生まれた人々を守護する神様)が祀られており、御祭神は住吉大神、神功皇后、志賀明神。さらに境内には10社の末社が合祀されています。

創建時期は不明ですが、島の名前の由来に「神功皇后が住吉の神霊を残した島(残島:のこのしま)」で、この神霊を祀ったのが当社であるという伝承があります。

 

白鬚神社のおくんち行事の起源

九州地方には秋の収穫感謝祭として「おくんち行事」が各地に存在しています。この地は近世に廻船業の拠点として栄え、船が帰港する旧暦9月末から10月末までが島の主の在留期間であった為、旧暦および新暦通して10月9日が祭日であったと推察されています。

この御神事は、

『島の五穀豊穣と発展を感謝する行事』

です。

日程は101日の注連ない、4日の注連おろし、8日の切り盛り、9日のおくんち、10日のトウ渡しと進行していきます。

現在、能古島には古くからある4つの地区(東、江ノ口、西、北浦)と新たにできた大泊地区の1つあるが、おくんち行事は古くからある4つの地区が協力し合い実施されます。

今回は一番のメイン行事である10月9日のおくんち行事を見学させていただき甘酒と祭りの様子を記録しました。

 

特色ある呼び名や見た目の御神饌!柿・栗・蜜柑のドーム『モリモン』や甘酒『オロヘイ』

能古島の白鬚神社のおくんち行事のオロヘイ(甘酒)

 

当社のおくんち行事には「オロヘイ」と呼ばれる甘酒が供えられます。

 

 

 

能古島の白鬚神社のおくんち行事のモリモン

 

また、その他にミカン・柿・栗を竹串に刺したドーム状の盛り物「モリモン」、炊いたご飯を藁で包んで三角錐に成形した「お御供(おごく)」、塩漬けの小鯛「ナマノクサケ」など特徴的な神饌が見られます。

 

 

祭りやオロヘイなどの御神饌の由来は不明ではあるが、豪華で華やかさなモリモンは慶応3年(1867年)の記録から現代と同様の盛り付けであったようです。

能古島に渡る日の朝、壁に博多甘酒万十(あまざけまんじゅう)と書かれた「おがわ饅頭店」という和菓子屋が早良区西新の商店街の一角にありました。
当店の女将さんに話を聞く機会があり、福岡ではハレの日には甘酒や甘酒饅頭を食べる習慣がある事を伺うことができた。

本州のみならず、九州の地域にも甘酒を用いた祭りや、甘酒を飲食する文化があるのは非常に興味深い!と感動を胸に能古島へと向かいました。

 

白鬚神社のおくんち行事の感想

福岡県福岡市西区の能古島

2019年10月9日(水)、壮快な秋晴れ、気温も25℃前後と程よい気候で気持ちよいが、冬がひしひしと近づいてくるのを感じる。

能古島の白鬚神社のおくんち行事のモリモン2


能古島へ降り立ち、白髭神社に歩を進めると、途中の集会所に人が集まっているのが目に留まり立ち寄る。島の方々に話を聞くとモリモンなどの御神饌はこの集会所から運び出されるとのこと。

集会場には神前に備える甘酒やその他の御神前が安置されていた。

 

10時になると、竹で作られた舟に、モリモンを始めとする御神饌を乗せ、子供を先頭に神社へと向かう。境内前の鳥居付近に舟を置き、そこから御神饌を神殿に運び込む。

能古島の白鬚神社のおくんち行事のモリモン3

 

神職の方を先頭に、子供、そして御神饌の列が続く。その量は非常に大量!圧巻であり、他の地域の祭りと比べてもかなり多い気がした。

 

 

 

能古島の白鬚神社のおくんち行事のお御供

 

神殿に運び込まれた御神饌は、神前に供えられるが、炊いたご飯を藁で包んで三角錐に成形した「お御供(おごく)」の藁が解かれたが、その瞬間までご飯だとは全く気が付かなかった。

 

 

また、御神饌は本殿だけでなく、10の末社に至るまで供えられた。

能古島の白鬚神社の10の末社

能古島の白鬚神社のおくんち行事の神事


11
時から神前で儀式が執り行われる。この際、甘酒は一緒に運び込んだモリモンとは別の御盆の容器に納められている。
11時半には神前での儀式が終わり、各御神饌は4つの地区それぞれが持ち寄ったものを回収し、魚、栗、柿、ご飯、甘酒を分け合い食べる。

 

能古島の白鬚神社のおくんち行事のオロヘイ(甘酒)2

 

4つの地区のうち、2つの地区の甘酒をいただくことができた!地区名の記載を忘れてしまったが、16.7%6.7%で味もしっかり甘いものとお粥そのものと言った感じで甘さのないものと出来上がりに大きな差があった。

 

能古島の白鬚神社のおくんち行事のモリモン4

 

当地のおくんち行事では、ミカンやクリを刺してドーム状に飾り付けたモリモンが非常に目立ち、まさしく祭りの華であった。しかし、甘酒も祭りの大切な要素として存在していることやその様子を確認することができた。

 

福岡県福岡市西区の能古島から見た街並み

帰りの際、フェリー待合所から博多を見るとほんの1キロも離れていない場所なのに目に映るのは大都市で不思議な感じがした。

フェリーに乗り、潮混じりの秋風に吹かれながら振り返る能古島。都市から離れることで保存されてきた文化に触れた余韻に浸りつつ、この地を後にした。

 

白鬚神社のおくんちの情報

開催日:10月9日本祭(10:00〜集会所から神社へ移動、11:00〜11:30式典、12:00〜直会)

最寄り駅(アクセス):フェリー待合所「能古旅客待合所」から0.5キロ(徒歩6分)

住所:福岡市西区能古719

福岡市(公式シティガイド・YOKA NAVI):https://yokanavi.com/feature/64096/

福岡市経済観光文化局(福岡市の文化財):http://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/cultural_properties/detail/131

 

参考文献

・新修福岡市史民俗編・春夏秋冬・起居住来